kita-no-hito-shimbun

-きたのひと新聞-

<社説>後半国会 与党野党ともに力が試される

 
 政府の経済対策を裏付ける2023年度補正予算案が衆参両院の本会議で審議入りした。
 きのうの代表質問でも、経済対策の一環で打ち出した所得税と住民税の減税などを巡り、明確な説明を避ける岸田文雄首相の姿勢は変わらなかった。
 物価高にあえぐ国民生活が一時的な減税で本当に上向くのか。物価高を上回る賃上げを実現する政策は何なのか。
 疑問を放置すれば、政治への信頼は揺らぐ一方だ。内閣支持率の低迷は、首相のセンスのない答弁が大きな要因だろう。
 首相は国民の不信を真摯(しんし)に受け止め、丁寧な説明に徹しなければならない。
 首相は代表質問で、減税について「国民から見れば、新型コロナウイルス禍の際に納めた税金が戻ってくるという意味で還元そのものだ」と意義を強調した。
 鈴木俊一財務相は今月8日の衆院財務金融委員会で、過去の税増収分は使用済みで残っていないと述べた。「増収分を国民に還元する」と繰り返してきた首相の説明に疑問符が付いた。
 しかし、その疑問は、政府の会計制度が単式簿記制度のため、的確に説明できないことによって生じたものにすぎない。増収分が国債償還に使用済みであっても、貸借対照表でみれば、財務体質がその分好転しているのだから、国債を発行する余力が当然に増えている。政府は早急に複式簿記に基づく予算・決算制度を確立し、財政状況を明示するよう努めるべきだ。
 後半国会では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済のための財産保全が焦点の一つになる。問題を受けて不当寄付勧誘防止法が昨年成立したが、高額献金などの被害の報告は続いている。
 旧統一教会の被害者救済については、立憲民主党日本維新の会が教団の資産流出を防ぐ財産保全法案をそれぞれ提出している。
 自民、公明両党は教団の財産保全に特化した法制定は見送り、被害者の訴訟費用支援などを盛り込んだ法整備にとどめる方針だ。
 政府として、犯罪被害をどのように救済するか、論戦を通じ、対策を探ってもらいたい。
 野党は相次ぐ政務三役の辞任を巡る首相の任命責任や、自民党5派閥によるパーティー収入の過少報告なども追及する。
 派閥の推薦に基づく順送り人事、政治とカネといった問題は自民党に長年しみ付いた体質と言っていい。
 それにも関わらず、一向に上昇機運が高まらない野党の支持率を見ると、野党は国民の期待に応えられていないことが明らかである。
 政府与党だけでなく、野党の力も試される国会となる。
 
(参考)