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-きたのひと新聞-

<社説>データセンター誘致 競争力を高めよう

 
 デジタル社会に欠かせない大規模データセンター(DC)の道内拠点化が本格的に動き始めた。
 DCはインターネットを通じて大量のデータの処理・保管を担う施設で、人工知能(AI)や自動運転などの進展で重要性が増す。
 DCは東京や大阪周辺に8割が集中しているが、既存施設は老朽化が進み、災害や電力不足の恐れもある。一方、道内にはDCが43カ所立地するが、大規模施設は多くない。
 国の有識者会合はリスク分散で道内の拠点化を提言していた。北海道は豊富な再生可能エネルギーと冷涼な気候から適地と評価される。
 通信大手ソフトバンクは苫小牧東部地域に国内最大級DCを計画し、2026年度までに一部を先行整備すると今月発表した。
 有識者会合は5月に北海道と半導体産業が盛んな九州を「第3、第4の中核拠点」と明示し、経済産業省が両地域で補助を拡大した。ソフトバンクは適用第1号となり、投資額約650億円のうち300億円を経産省が補助する。
 千歳ではNTTがラピダスの生産する次世代半導体を使い、DCの省電力、大容量化につながる光通信技術開発を図る方針という。
 苫小牧は北極海経由で日本と北欧を結ぶ海底光通信ケーブルの陸揚げ地点の候補に浮上した。国際的な拠点形成も視野に入ろう。
 これらを呼び水にさらに企業進出が予想される。
 北海道の強みを生かし、投資を呼び込むため、国や道はインフラ整備も含め詳細な展望を示す必要がある。
 消費電力が大きいDCは安価で安定した電力が必要不可欠である。その一方で再生可能エネルギーの利用拡大も求められ、ドイツは27年以降に義務化する方向だ。道内は洋上風力など再生可能エネルギー発電計画が相次ぎ、ソフトバンクはグループで苫東のメガソーラー事業を手掛けている。
 だが、再生エネルギーは気象や天候に左右され、安定供給に不安が残る。大規模DC立地が続いた場合には電力不足の不安もある。
 国の立地政策は経産省総務省が進めるが、インフラ整備や人材確保など問題は多岐にわたる。
 鈴木直道知事は3年前から道央圏を中心にDC誘致を進め、昨年11月には「北海道データセンターパーク」構想を打ち出している。だが具体的な青写真や工程表は示していない。
 北海道の優位性を生かしてDCを誘致するためには、安価で安定した電力供給が必須である。再生エネルギーと原子力発電のベストミックスにより、原発の稼働している地域との競争に打ち勝てるようよう、知事には指導力の発揮が求められている。
(参考)