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-きたのひと新聞-

<社説>JR自由席廃止 乗客の利便性向上と経営改善の好施策に

 
 JR北海道が来年3月のダイヤ改正で四つの主要特急の自由席を廃止し、全席を指定席にする。
 自由席を廃止するのは札幌発着で函館を結ぶ北斗、室蘭のすずらん、釧路のおおぞら、帯広のとかちだ。旭川を結ぶカムイ、ライラックでは自由席の割合を減らす。
 自由席が廃止される4特急では往復割引など従来の各種割引切符も廃止し、インターネット予約「えきねっと」での割引に統一するという。
 指定席券との差額で500円ほど高くなるが、JRは「えきねっと」割引拡大で利用客負担を抑えるという。早期予約では今の自由席より安いケースも想定する。
 人手不足が深刻なJRにとって、車内検札が不要になるなど、乗務員の作業負担が緩和され、省力化や経費削減にもつながることが想定される。
 JRの今期の9月中間連結決算は純利益が117億円となり2年ぶりに黒字転換となったが、本業の収支である営業利益は174億円の赤字であり、特に鉄道をはじめとした運輸事業の赤字は218億円にのぼっている。
 営業利益の巨額の赤字は、基金の運用益で補填しているが、市場環境に左右され、JRの安定経営のためには、本業の立て直しが急務である。
 電気や燃料代高騰などもあり、通期業績予想の純損益は84億円の赤字のまま据え置かざるを得ない状況であり、特急利用低迷の中で収益改善の取り組みを着実に進める図る必要がある。
 運賃については、自由席廃止により、航空会社と同じく、人工知能(AI)を活用した需要予測に基づくきめ細かい設定「イールドマネジメント」を目指という。
 綿貫泰之社長はこれによる増収効果について「年間通してみないとわからない」と示さなかったが、一定の経営改善が見込めよう。
 加えて、指定席の売り切れが減ることで、高齢者や障害者などが冬の寒いホームに早くから並ばなくても確実に座席に座れるようになるほか、多様な運賃が利用できることは、乗客の利便性の向上になる。
 在来線特急の自由席廃止はJR東日本、西日本でも既に導入し、ネット予約も主流となっている。
 生産年齢人口の減少により、ネットを活用した効率化を行わなければ、本州のJRであっても、経営が成り立たない時代である。
 ネットを使い効率的に予約する乗客にはそれに応じた運賃を、これまでどおりの発券を希望する乗客にはその人件費に応じた運賃を設定せざるを得ない時代となっている。
 全道に鉄道の莫大な資産を持ち、そのための人材を多く抱えるJR北海道であればなおさらである。
 詳細な制度設計は明らかになっていないが、事前予約できなかった場合の立ち席割り引きや短区間の乗車などにおける乗客の利便性の確保をはじめ、運休振り替えや年末年始、お盆の混雑といった場合への対応を万全なものとし、JRの乗客の利便性向上と経営改善の両立を積極的に進めてもらいたい。
(参考)