流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンは、パートなどを合わせた全体の目標を「6%基準」とする方向だ。
24年春闘は、日本経済が長らく続いた賃金の低迷から抜け出し、適度な物価上昇を伴う成長の軌道に乗るかどうかの正念場と言えよう。
労使ともにその重要性を改めて認識し、大幅な賃上げの持続に努めてもらいたい。
23年春闘では、約30年ぶりにベアと定昇を合わせて3%を超える賃上げが実現した。しかし、毎月勤労統計によると、実質賃金は9月まで18カ月連続で前年同月を下回っている。
日銀は24年度の物価上昇率を23年度並みと見込むが、賃上げが金融政策正常化のカギを握るとみている。
賃上げ水準が物価上昇を上回らなければ、実感できる暮らし向きの改善は遠いと言うほかない。連合は5%の賃上げを最低ラインと位置付け、経営側との交渉に臨むことが求められよう。
欧米では今年、ストライキが目立った。背景には物価高に苦しむ世論の支持があるとされる。欧米と比較して物価上昇は抑えられている日本でも、賃上げを求める声とともに、労組への期待感が例年以上に高まっている状況だろう。
連合は、24年春闘の結果次第では自らの存在意義が問われかねないことを肝に銘じてほしい。
物価高や深刻な人材不足などによる賃金上昇圧力が、人手不足に拍車をかけ、中小企業の経営を圧迫している。一方、上場企業の9月中間決算は全体で増収増益となる見通しだ。
利益を出している大企業は大幅な賃上げに取り組むだけでなく、取引先の中小企業が賃上げできるよう、労務費などの価格転嫁を受け入れる責任がある。
経団連は今年以上の賃上げを呼び掛ける方針だ。これまでのデフレ下で、給料をコストとみて削減対象とする意識から抜け出し、物価上昇に見合った賃上げを行い、経済の歯車を回していく必要がある。
政府は中小企業の賃上げを促進するための税額控除について、赤字決算でも繰り越せる制度の創設を経済対策に盛り込んだ。
生産性向上や省力化に向けた設備投資、事業再生の推進など、中小企業が持続的に賃上げできる環境を整備する支援の強化に一層努めることが肝要である。
そしてもっとも大切なのが、様々な産業、立場の労働者の賃上げを国民が前向きに受け止め、社会全体として賃上げを評価する雰囲気を作っていくことである。
(参考)