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-きたのひと新聞-

<社説>慰安婦訴訟判決 韓国は合意に基づき解決を

 旧日本軍の元従軍慰安婦らが損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、韓国のソウル高裁が原告の請求を却下した一審判決を取り消し、日本政府に賠償を命じた。
 国家は他国の裁判所に裁かれないとする国際法上の「主権免除」原則を認めるかが争点だった。高裁は免除を認めない場合があるとし、一審と逆の判断を示した。
 上川陽子外相は「国際法及び両国間の合意に明らかに反するものだ」「極めて遺憾で、断じて受け入れることはできない」「韓国は自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講じることを強く求める」との談話を出し、強く反発している。
 当然である。
ある国が他の国の裁判所に自由に裁かれ、その判決に従わなければならないとするのであれば、明らかな主権の侵害である。
 さらに、日韓の賠償の問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みであり、慰安婦問題を巡っては2015年に双方で最終的な解決を図った日韓合意がある。 
 日韓合意は日本が拠出した10億円を基にした元慰安婦への支援金支給が柱だ。ただ文在寅(ムンジェイン)前大統領が元慰安婦らを支援する財団を解散するなど、事実上白紙化し、日韓関係は冷却化した。
 尹錫悦(ユンソンニョル)政権下で日韓関係は改善に向かってきたが、このように過去の協定や合意の趣旨を踏みにじり、日本の主権を尊重しない判決が下されること自体が、日韓関係の発展の障害となっていることを韓国は認識すべきである。
 尹政権は合意を尊重する立場だとしている。まずは元慰安婦らと対話を進め、合意の精神に立ち返り、国内で解決する必要がある。
 韓国の高裁は、植民地支配下などでの不法行為に対しては主権免除を認めない国際慣習法が存在すると指摘した。原告らは拉致などで慰安婦に動員されたとし、当時の国際条約などに違反するとしている。
 主権免除に関しては人権重視の流れを考慮するべきだという主張だが、国際的な解釈とは著しく乖離している。慎重に検討を尽くしたと言えるか、疑問が残る。
 判決後、原告の元慰安婦李容洙(イヨンス)さんは「日本は心から謝罪し、賠償をしなければいけない」と語っている。
 尹政権は今年3月、元徴用工を巡る問題で韓国政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う解決策を示した。元慰安婦は高齢化が進む。韓国政府は合意の速やかな履行を行う努力を行うべきだ。
 日本政府は、主権免除の原則から裁判に参加していないため、上告せず、判決が確定する公算が大きい。
 判決が確定すれば、日韓関係の大きな障害となることは明白である。日中韓3カ国の外相会談があす韓国で開催され、上川外相も参加する。慰安婦問題について韓国の朴振(パクチン)外相に日韓合意に基づいた行動をとるよう求めるべきだ。
(参考)