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-きたのひと新聞-

(社説)補正予算成立 与野党の新たな政策実現に向けた動きを評価

 参院本会議で2023年度補正予算が可決、成立した。

 今回の補正には含まれないが、首相が打ち出した来年度の定額減税も視野に入れながら、財源が不足して財源の7割が借金頼みという補正予算である。物価高に苦しむ低所得者への給付金や、産業を支援する基金の積み増しや公共事業の継続といった必要な経費かもしれないが、岸田首相らから、財源論を含めた説得力のある説明は最後まで聞かれなかった。

 補正予算については、今の経済情勢で、東日本大震災後などに匹敵する13兆円余りの財政出動が必要なのかという根本的疑問や、政策目的は何か、即効性のない減税にこだわり、防衛増税との整合性はどうなっているのかといった疑問がある。しかし、衆参3日ずつの予算委員会での質疑では、野党からの数々の疑問に対し、首相から腑(ふ)に落ちる答えはなかった。

 これでは、国会全体への信頼が揺らぎかねない。

 これでは、国民の経済対策への理解も、内閣への信頼も、回復は望めまい。首相の判断の根っこには、自らの権力維持や選挙対策があるのではないか。そんな疑いの目が注がれていることを、首相は深刻に受け止めるべきだ。

 今回の補正予算には、野党から日本維新の会と国民民主党が賛成に回った。緊急の災害対策などを盛り込んだ補正予算に野党が賛成することは珍しくない。

 野党は、政権与党を厳しくチェックするもの、というこれまでの観点では異例だが、それぞれの政党の掲げる政策の実現のために対決から解決へ、という野党の姿勢は前向きに受け止めたい。

 国民民主は、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」発動の検討を首相が指示したことを大義名分とした。昨年春、同じ理由で、野党としては極めて異例の当初予算への賛成に踏み切りながら、実現に至らなかった。与党は今回は誠実に国民民主党に向き合い、トリガー条項発動に向けて協議するべきだ。

 維新が岸田内閣の提出した予算に賛成したのは初めてだ。大阪・関西万博の追加負担分が計上されていることなどを理由に挙げたが、自党の関心政策を優先した判断は、ご都合主義ではないかという批判もある。

 単純に与党対野党という構図だけでなく、様々な政策実現の道が開かれたものとして今後の動きを見守りたい。

 国会が役割を果たせなかったという点では、野党第1党の立憲民主党にも責任の一端はあろう。型通りではない徹底審議を求め、問題点をよりわかりやすく国民に示すことはできたはずだ。

 単純に国会で対決する野党が国民の支持を得られるのか、与党と丁々発止で協議して、泥臭く政策実現を目指す野党が支持されるのか。

 今後の政治の動きを見守りたい。

(参考)

www.asahi.com