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-きたのひと新聞-

(社説)前原新党 野党結集 口だけ番長を超えて

 国民民主党前原誠司代表代行が、新党「教育無償化を実現する会」の結成を表明した。一緒に離党届を提出した3人に、無所属の1人を加えた国会議員5人で構成する。

 前原氏は、政策実現を掲げて政権与党とも連携する玉木雄一郎代表の党運営に異議を唱え、9月の代表選に立候補したが大差で敗れ、ノーサイドといって代表代行の座についた。

 前原氏は、玉木氏が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」発動の検討を政府与党に飲ませて、補正予算に賛成するなど、政策本位で岸田政権と連携したことから、たもとを分かつ決心をしたと主張している。

 前原氏は会見で、「政策本位で非自民、非共産の野党結集を進め、政権交代の選択肢をつくる」と動機を語り、綱領で新党を「改革政党」と位置づけた。日本が抱える難題を解決するカギが「教育無償化」だとして、それを党名にし、教育予算の倍増以上、奨学金の返済免除などを前面に打ち出した。

 ただ、政策本位といえば、国民民主党がつねづね実践してきたことであり、教育無償化といえば、日本維新の会の看板政策だ。

 そうであれば、国民民主党の代表代行である前原氏は、党にいて維新の会との連携を模索することもできたであろうし、党として連携できないのであれば、離党して維新の会へ合流することもできたであろう。

 それをせず、年末間近のタイミングで結党したのは、政党交付金目当てであろう。1月1日時点で国会議員5人以上を有する政党は交付対象となるからで、比例代表で当選した議員は所属政党を既存の別政党に変えることができないからだ。

 前原氏の主張を素直に聞けば、結党は代表戦敗北後か、補正予算に反対したうえで行うべきで、つじつまがあわない。

 批判反対だけの野党第1党は支持率が伸び悩み、是々非々で政策実現を目指す野党が巨大与党に政策を飲ませることで国会審議が進むため、センスのない岸田内閣の支持率は最低水準で推移しているにもかかわらず、低空飛行で政権が維持されている。

 自公政権に代わる受け皿をつくり、政治に緊張感を取り戻したいという主張はもっともだが、額面通りに受け取れない事情も透けてみえる。

 前原氏はもともと維新との連携を探っており、新党は維新への合流の布石ではないかとみられている。しかし、維新の馬場伸幸代表はかつて、「第2自民党でいい」と発言し、連立参加の可能性も否定しなかった。野党第1党の立憲民主党と、次の衆院選でその座をとって代わろうとしている維新の手を結ばせるのも容易ではない。当然、このような行動に出た以上、国民民主党が野党の結集に参加することはないだろう。

 そんな困難な関係性の下で、国民民主党の代表選挙に出て、大差で敗北したら、少数の仲間を引き連れて党から出ていく前原氏が「非自民、非共産」の旗印の下で大きなカタマリをつくれるとは到底思えない。

 過去にも前原氏は民進党代表だった17年の衆院選に際し、小池百合子東京都知事が率いる希望の党との合流を決め、野党勢力の分立を招いた。

 そして今回も、野党の結集を理念に掲げておきながら、分断を深めかねない行動に出た。かつて口だけ番長と呼ばれた前原氏、あまりに政治センスがないと言わざるを得ない。

 とはいえ、政治家は結果責任である。国民からの冷たい視線を浴びながら、結集の実をあげるべく全力を注がなければならない。

(参考)

www.asahi.com