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-きたのひと新聞-

社説 札幌五輪招致「白紙」に まずは着実な市政を

 街と住民の未来を考え、オリンピック招致だけにこだわるのをやめるべきではないか。

 国際オリンピック委員会IOC)が、2030年冬季大会の最優先候補地にフランスのアルプス地域、34年大会には米国のソルトレークシティーを選んだ。

 さらに38年大会についてはスイスと「優先的な対話」を進めると発表された。札幌市は当面、IOCと交渉できず、38年も絶望的だ。

 札幌招致は「白紙」に戻された。可能性があるのは42年大会以降になる。既に10年近くを費やした招致活動を20年先の大会招致に向けてこの先も続けるのは現実的ではないだろう。

 札幌市の秋元克広市長は「もう事実上、土俵がない。ゼロベースで考えていかざるを得ない」と撤退を示唆した。

 事態が暗転したのは昨年の夏以降だ。東京大会のスポンサー選びや会場運営を巡って汚職や談合事件が発覚した。

 しかし、日本オリンピック委員会JOC)は事件の検証を十分にせず、ほとぼりが冷めるのを待つ姿勢に終始した。五輪への国民の信頼は損なわれ、30年大会の札幌招致の断念に追い込まれた。

 IOCとの意思疎通の不足も浮き彫りになった。30、34年大会開催地の一括選定や、38年大会の優先的対話の情報を把握していなかったJOCの責任は重い。

 かつてIOC内では札幌の運営能力などが高く評価され、30年大会の「本命」と目されていた時期もあった。地元財界では北海道新幹線の札幌延伸と五輪開催による経済活性化への期待が高かった。

 1972年五輪の成功体験から札幌には「夢を再び」の思いがあったのだろう。

 だが、東京大会の不祥事により市民に広まった不安感に対し、JOCや秋元市長がリーダーシップをとり、積極的に説明をしたとはいえず、地元での大会招致の機運は高まらなかった。

 そうした姿勢がIOCから不信感を持たれ、開催地の選定に関する情報が提供されず、38年までの開催地の選定候補から外れることになったのであろう。

 札幌にとって、五輪以上に少子高齢化や人口減少による問題が具体化し、ますます困難な時代を迎えることになる。夢を与えるスポーツイベントも必要だが、まずは住民の暮らしに寄り添った政策に着実に取り組んでいってもらいたい。

(参考)

mainichi.jp