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-きたのひと新聞-

<社説>核ごみ調査3年 着実に進める必要あり

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡る後志管内寿都町神恵内村での文献調査が開始から3年たった。
 原子力発電環境整備機構(NUMO)による調査は慎重に進められ、目安とした2年間から大幅に延びた。調査結果をまとめた報告書は年明けに公表される見通しで、調査は大詰めを迎えている。
 ボーリングなどを行う次の段階の概要調査に進むには首長と知事の同意が必要となる。片岡春雄寿都町長は住民投票で最終判断するとしているが、新たに調査を受け入れる第3の自治体が現れることを条件としている。
 その候補だった長崎県対馬市では9月、市長が調査に応募しないことを表明した。NUMOは全国行脚しているが、手を挙げる自治体は出ていない。
 鈴木直道知事は両町村が概要調査に進むことに反対している。
 国の選定プロセスは行き詰まっているのではないか。
 国が多額の交付金で最終処分事業へ誘導する手法は批判が多いが、最終処分場選定は国民的議論の下、科学的知見に基づき、公正、公平に進めていかなければならない。
 一方で、地層処分を疑問視する専門家もいる。地質学者などの有志グループは、地殻変動の激しい日本で、放射性廃棄物が無害化するまでの10万年間、地下に封じ込めるのは不可能だと指摘し、先月、「日本に適地はない」として計画中止を求める声明を出した。
 日本学術会議は廃棄物を地上に50年間、暫定保管し、最終処分のための合意形成や適地選定、リスク評価を行うよう提言している。
 とはいえ、放射性廃棄物を処分しないまま、積みあがるに任せるわけにはいかず、長期間の地上での暫定保管は単に問題を先送りするだけに過ぎない。
 政府は、このような声に対して、地層処分の妥当性や、その最適地の条件は何なのか、改めて説明し、国民に理解を求め、最終処分地の選定を進めていく必要がある。
 10万年後の日本を誰も想像できないが、我々世代が後世に禍根を残さないために、国民の関心を高め、国会で議論し、核のごみが未来の人類や環境に影響を与えないよう最終処分にむけた合意形成を行う必要がある。
 エネルギー価格の高騰のなか、低廉で安定した電力供給を行うためには、原発の再稼働、既存原発の更新が必須である。そのためにも、速やかに処分地の選定を進めなければならない。
(参考)