kita-no-hito-shimbun

-きたのひと新聞-

<社説>バス運転手不足 地域の在り方の見直しが急務だ

 道内各地のバス路線で廃止や減便が相次いでいる。北海道新聞の調査では主要な20社のうち半数の10社が今年減便を行っていた。
 夕鉄バス(夕張)は夕張市など南空知5市町と札幌市を結ぶ計3路線を先月末廃止した。48年前の夕張鉄道廃線後を支えた路線だ。
 北海道北見バス(北見)は7月から65便を減便中だ。北見地域で平日運行する便の12%に当たる。
 札幌圏や都市間バスも例外ではない。4社共同運行だった函館―札幌間は1社が撤退し、今月から1日4往復に半減し、12月からは北海道中央バスの札幌中心部に乗り入れる路線を中心に12路線の短縮と廃止、減便を含めて590便の見直しが行われた。
 深刻な運転手不足が理由だ。北海道バス協会加盟の運転手数は昨年5,496人で30年前のピークから3割減った。厚生労働省によると平均年齢は55.3歳で10年前から10歳上がり高齢化も進む。
 バス運転手の年収は全職種平均より1割以上低いといい、若手採用は苦戦する。労働時間上限や休息を義務付ける2024年問題が業界に及び人手不足は加速する。
 生活の足である路線バス網が機能しなくなれば地域の衰退は加速する。運転手不足は全国的な問題だが、面積が広大で集落が点在する道内はより影響が大きい。
 名寄市は来月から人工知能(AI)活用型のオンデマンドバスを運行する。利用者の予約からAIが最適な経路を算出し、乗り合い方式で効率的に走らせるという。
 十勝管内上士幌町などで取り組みが進む自動運転バスも、先月から苫小牧市が中心部で実証運行を始めた。
 いずれも先端技術で人手不足を補う試みだ。全道展開できるよう期待したい。
 また、同じく運転手不足に悩む物流業界と協力し、オホーツク管内斜里町の斜里バスは路線バスに宅配物を乗せて運ぶ「貨客混載」をヤマト運輸と連携して今年から始めた。今後は都市間バスでも検討する。
 そういった対策の一方で、運転手が不足し、運ぶべき集落の人口も減少していく中で、これまでの路線を維持することはできないことを受け入れていかなければならない。
 限られた人的資源で維持すべきバス路線を冷静に見極め、将来の地域像、都市像を各市町村と道が共有し、持続可能なコンパクトシティを早急につくり上げねばならない。
(参考)