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-きたのひと新聞-

<社説>ライドシェア 課題を解決して早期に導入を

 一般ドライバーが自家用車で客を有料で運ぶ「ライドシェア」導入を政府が本格検討している。
 全国的なタクシー運転手不足の中で、地域の移動手段を確保する目的という。岸田文雄首相は先月の所信表明演説で「深刻な社会問題」として取り組むと述べた。
 ライドシェアは米国や中国などで普及し、スマートフォンでの予約・決済ができて利便性は高い。
 運行管理や車両整備など安全への懸念がある一方で、コロナ禍からの回復でタクシー需要が増す大都市や観光地などで期待が高まっている。
 背景には深刻な運転手不足がある。運転手は、今年3月で全国は約23万人、道内は約1万1800人とコロナ禍前に比べ2割以上減少した。
 そこに外国人観光客や繁華街の人出の増加で一気にタクシー不足が生じた。
 タクシー運転手不足は他業種より低い収入水準が要因の1つだが、公共交通として料金の制約があり、収入水準の大幅な向上は見込めない。
 後志管内倶知安ニセコ両町では北海道ハイヤー協会や配車アプリ会社と協定を結び、今冬に札幌のタクシーが長期出張する。観光客と地元の足を両立する試みが行われているが、限られたパイの取り合いに過ぎず、解決策とは程遠い。
 自家用車の有償運送は「白タク行為」として法律で原則禁止されており、政府は地域や時間帯を限定した解禁を視野に入れている。規制改革推進会議は作業部会で年内にも報告をまとめるが一部委員は全面解禁を求める。
 最大の課題は安全面だ。タクシー会社の管理で普通2種免許を持つ社員が運転するのと違い、ネット登録のドライバーが対応する。
 ライドシェア先進地の米国では交通事故のほか暴行事件の被害例もあるという。運転手は個人請負の事業主であり、配車会社の責任がどこまで及ぶか不透明だ。
 政府が2006年に開始した「自家用有償旅客運送制度」では過疎地などで例外的に自家用車使用が認められている。
 道内でも導入例があり、路線バスの代替や要介護者らの送迎などさまざまな形態に利用されている。また、これとは別に宗谷管内中頓別町留萌管内天塩町は町民互助でボランティア型ライドシェアを実施している。
 こういった先行事例も参考に、車両点検やアルコール検査も含め、安全性を担保する制度を設計していくべきである。
 タクシーは高齢者や障害者にとって欠くことのできない交通機関であり、運転手不足で移動する権利が守られなくならないよう、ライドシェアの取り組みは必要不可欠である。また、規制緩和でビジネスを開拓する側面もあり、地方の交通にもプラスの効果が及ぶような仕組みづくりを早急に行ってもらいたい。
(参考)