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-きたのひと新聞-

<社説>武器輸出の緩和 積極的な議論が必要だ

 
 武器輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則の見直しを巡る自民、公明両党の実務者協議が再開された。9月の内閣改造自民党人事などの影響で中断していた。
 新たな論点は、海外企業に特許料を支払い、日本で「ライセンス生産」する武器の扱いだ。地対空ミサイルや砲弾の対米輸出を認めるかが議論されている。
 現在の三原則の運用指針は、ライセンス生産品の輸出を厳しく制限している。
 米国のライセンスで製造した装備品については、部品に限って輸出できるが、完成品は認めていない。米国以外のライセンス生産品は部品も完成品も輸出できない。
 自民がルール緩和で想定するのは、米国ライセンスの地対空ミサイル「パトリオット」などを完成品として米国に輸出することだ。
 憲法9条国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇や行使を禁じている。そのため、日本は長年、殺傷武器の輸出を厳しく制限してきた。
 しかし、現実として、ウクライナに侵攻しているロシアのように武力の行使により自国の主張を実現しようとする国家が存在しており、日本だけがそのような侵略を受ける国家への支援に後ろ向きでよいのだろうか。
 他国からの侵略を受ける国に対し、日本が自衛のために使用する兵器を支援することは、平和憲法の理念と矛盾しない。
 実務者協議では、英国、イタリアと開発する次期戦闘機を念頭に、他国と共同開発した装備品の第三国への輸出を容認した。
 現行制度で輸出を認める「警戒」「監視」など非戦闘5類型の制限緩和や撤廃も議論している。
 日本の周辺でも環境の変化が著しい。武力を用いた威嚇が現実に行われており、台湾有事への備えも必要となろう。
 台湾有事となれば、日本が支援を行うだけでなく、支援を必要とする立場になることも十分に考えられる。
 武力による国際秩序への挑戦を防ぐためにも、自由、人権、民主主義を尊重する国々で自衛のためのサプライチェーンを速やかに構築しなければならない。
 岸田文雄首相は、多様な意見に耳を傾けるつつ、国民に対する説明責任を果たし、国の方針を定めなければなるまい。
(参考)