物価の動きに明らかな変化が。
日本の物価は1990年代半ばから進行しており、これまで失われた10年が気づけば、失われた20年となり、それが今、失われた30年となっています。
物価が上がらないことで、企業はコスト縮減で利益を確保しようとするため、賃金が抑制され、それが消費者の価格意識を高めて、節約するために物価は押し下げられる、というデフレスパイラルにはまった30年間でした。
それが大きく変わり始めたのがここ2年の動きです。
ロシアのウクライナ侵攻や円安によるエネルギー価格の高騰や人手不足による人件費の上昇に伴って、さまざまな物価が上がり始めました。
消費者物価指数は27か月連続でプラスになっています。
物価はあがる。賃金はどうなっているか
物価上昇が春闘での賃上げの追い風となり、去年の春闘では、平均3.58%の賃上げが実現しました。これは、30年ぶりの高水準だそうです。
その一方で、物価上昇の影響を取り除いた実質賃金は直近でもマイナスで推移しており、物価高に賃金上昇が追い付いていないことを示しています。
今年の春闘では、物価高に打ち勝つ賃上げを実現しないと、実質的な手取りが減ってしまうことを意味します。
物価上昇や賃上げの影響は?
物価が上がり、賃金が上がるということは、どういうことになるかというと、商品に魅力がなくて物価を上げられない企業や賃金をコストとみなして低い賃金で社員を働かせて経営を成り立たせている企業は、この先、経営していくことが難しくなります。
一時的には、企業の倒産も増えるでしょう。
しかし、その一方で、魅力ある商品を作って値段を高くしても売ることができる企業、高い賃金を支払える企業は生き残っていきます。
つまり、デフレで低賃金の環境で生きながらえてきた低付加価値の企業が退場して、高い価値を生み出せる企業が生き残る環境になっていきます。
このような一時的には痛みを伴っても、生産性を高めることができる企業を増やすことが、物価上昇を上回る賃上げを実現し、最終的には好循環につなげることができます。
センスのいい岸田内閣の取り組みをみてみる
こういった好循環への入り口がすぐそこに迫っているのに、その入り口に踏み込もうとしないのが、センスのいい岸田内閣のいいところです…
一時的な所得減税や低所得者への給付金といった、その場しのぎにしかならない施策を打ち出し、ばらまき政策にもかかわらず、世論は反対が目立つという岸田内閣のちぐはぐ感をこれでもかと見せつけてくれます。
今やるべきなのは、一時的な減税や給付金ではなく、企業の賃上げや設備投資、研究開発といった将来につながる動きを促進することです。
これらに対して、税の軽減措置を設けて、民間主導での生産性向上を進めるべきです。
また、物価上昇に伴い、金融緩和施策についても転換の時期を迎えることになります。
金利が上がれば企業の設備投資や民間のローン金利が上昇し、景気を冷やすことになります。
政府、日銀は協力して金融緩和施策の出口戦略を実行してもらいたいです。
(参考)